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創造活動

3. オリジナル作品群

Original Works

パッケージ・メディアがもたらした衝撃

 LP・CDなどパッケージ・メディアへの取り組みは重要な意味をもっています。

 芸能山城組の第一弾LP「恐山/銅­之剣舞」(1976)は、音楽評論家、中村とうよう氏のプロデュースで制作され、同氏の卓見によって既存のジャンルの枠にはまらない音楽としてビクター音楽産業(当時)の、芸術音楽ではなく大衆音楽ジャンルのレーベル〈インビテーション〉から発表され、山城組が大きな社会的影響をおよぼす存在となる端緒を開きました。中村氏によって「新しい発想によって古い伝統から生み出された衝撃のサウンド」(LP「恐山/銅­之剣舞」ライナーノーツ)と評されたこの作品の音は、従来のLPの音の枠組みをあまりにも大きくはみ出していたために、録音からプレスに至るLP制作のほとんどすべての過程で既存の技術の磨きなおしを迫ることとなり、音楽産業と音響技術の分野にも従来にない強いインパクトを与えました。

Osorezan

 その後も、「輪廻交響楽」「交響組曲アキラ」「翠星交響楽」など全16タイトルに及ぶLP・CD、そしてDVD-Audio、Blu-ray、UHD Blu-rayへと進化するすべてのパッケージ作品制作に伴い、コンテンツ制作と技術革新との相乗作用をもたらしました。


祝祭空間の創造

 私たちは、多くの芸能は共同体の伝統的祝祭を構成する要素となっていること、さまざまな芸能が発する視聴覚情報に装飾や香気など五感を刺戟する多彩な感性情報が濃密に重層された祝祭情報空間では、参加者に強力な快感が誘起され、それはバリ島でみられるように昏倒に至るほど強烈な陶酔に至りうること、そしてそのような祝祭の快感に惹かれて人々が集い神々の威光の前に相和する「神々と祭りによる社会制御メカニズム」がバリ島の村落社会の安定と平和の維持に重要な役割を果たしていることなどを明らかにしました。

 このような伝統的エッセンスに根ざした祝祭空間を現代の都市に創造することを志して、山城組は東京・新宿の超高層ビル街を舞台に「ケチャまつり」を1976年以来毎年開催しています。

Cak Jegog

 一方、諸民族の芸能の表現戦略を分析して人間の群れによる多彩な表現の可能性を追求し、舞台芸術の概念を大きく塗り変えた作品、群芸「鳴神」を1978年に初演しました。「群芸」とは、演者が役割や領域の制限なく動く超柔体構造の表現システム、生理状態の制御による表現、音楽・舞踊・美術などが一体となった位相空間の創出などからなる新しい表現スタイルを名づけたものです。

Narukami Matsuri

 これらの蓄積を踏まえて、視聴覚を中心とする環境情報とその入力によって生物としての人間が感性的反応を生じる仕組みをとらえる感性科学や、現代の科学技術環境を背景に感性反応を効果的に導くための技術を理工学的な視点から構築する演出工学を体系化しました。このような理工学・自然科学的アプローチにもとづく理論と、長期にわたる祝祭空間づくりの実践の蓄積が、1990年の花博における「ランドスケープオペラ『ガイア』」(プロデューサー兼演出・音楽監督:山城祥二)など多数の要素や出演者を動員した複雑大規模な作品の演出の成功や、大友克洋監督のアニメーション映画「AKIRA」の音楽として制作した「交響組曲アキラ」(1988)の世界的な評価と今に続く長い人気につながっています。


「脳にやさしい音環境」デザインへの展開

 さらに、音と映像、香りなどの相乗効果によりストレスフリー状態を発生させ快眠に誘導するリラクセーション環境シミュレータ「快眠スタジオα」(1989)、脳がとろけるような快感と癒しをもたらすSACD「ハイパーソニック・サウンド・シリーズ」(1999)、現代都市空間の中にハイパーソニック・エフェクトを引き起こす多次元音環境を造成する「メディアージュ・アトリウム音環境システム」(2000)、究極の高音質をめざす「ハイパーハイレゾ配信」(2014)、「NEWoMan(新宿駅新南エリア)の快適な音環境構築」(2016)など、人間の耳に聴こえない高い周波数成分を豊富に含んだ音が身体と心の健康をつかさどる脳を活性化するハイパーソニック・エフェクトを活用することにより、「脳にやさしい音環境」をデザインする取組が本格的なものとなっています。

Akira Rinne Yamasari