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ケチャとは何か?

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ケチャこそ「絆」の科学・技術・芸術の粋

「神々の島」と呼ばれるバリ島の共同体が生み出した数多くの精華の中でも、一際異彩を放ち世界を驚嘆させ続けている奇蹟の合唱舞踊芸能「ケチャ」。100人以上の上半身裸の男性が車座になって円陣を組み、独特の叫び声で、脳幹を直撃する最強のリズム16ビートの合唱を奏でる中、絢爛たる衣装をまとった踊り手がヒンドゥーの古代叙事詩「ラーマーヤナ」の目眩く世界を、時に妖艶に、時にスペクタクルに演じる様は、観る人をたちまち陶酔の世界へと誘います。現生人類が生み出した表現芸術の一つの究極であると絶賛されるのも無理からぬ所です。

バリ島のケチャ
西欧近代文明の限界と綻びが隠せないものとなり、「利己から利他へ」「エゴからエコへ、そしてコミュニティへ」と社会が大きく位相を反転させる中、西欧文明に十分な免疫をもちながら強固なコミュニティを堅持しているインドネシア・バリ島が生み出したケチャの人類史的意義は、表現芸術の枠に留まるものではありません。

「個」=要素に最高の価値を置き、要素が加算されたものとして世界を捉える世界像−−個体中心世界像(Ego-centric Umwelt)−−が急速に崩壊していくのと並行して、多様な要素が「相互作用」によって結ばれた生態系に至高の価値を置く世界像−−生態系優先世界像(Eco-centric Umwelt)−−が急速に立ち上がりつつあります。この新しい世界像の中心をなすのが、決定論的科学では計測することも予測することも絶望的に困難な一つの相互作用、すなわち「絆」に他なりません。

実は、1時間足らずのケチャの中には、「絆」の真髄が様式化され芸術化された形で凝縮されています。指揮者もなしに猛烈に速い16ビートのリズムパターンを声で奏でるケチャを支えるのは、以心伝心、阿吽の呼吸、一心同体、適当制御など、まさに「絆」という相互作用の本質そのものなのです。

ケチャを演じることは、「絆」を視て聴いて触ることができる〈絆の科学〉の実践だといえます。同時にケチャは、「絆」を実現し堪能し陶酔できるようにした〈絆の技術〉だともいえます。さらにケチャは、「絆」を様式化し祝祭や儀礼へと昇華させた〈絆の芸術〉でもあるのです。まさにケチャこそ「絆」の科学・技術・芸術の粋であり、そこにケチャの揺るぎない人類史的意義があるといえるでしょう。

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